東京手話通訳等派遣センターでは、東京都から委託を受けて「東京都要約筆記者養成講習会」を開催しています。参加資格は、都内在住または都内に日常生活の場を有する方(都内在勤・在学)で、当該年度の4月1日現在18歳以上、要約筆記経験がなく、修了後、都内で要約筆記活動のできる方です。
4月から翌年2月まで、概ね毎週木曜日14:00~16:00 全42回
「募集要項」は当センターホームページ合わせて都内の各聴覚障害者団体に一定数を送付し、当該地域の対象者への配布をお願いするほか、請求により郵送・FAX等での個別送付も行なっています。
講 | テーマ | 時間 |
---|---|---|
1 | 聴覚障害の基礎知識 | 4 |
2 | 要約筆記の基礎知識Ⅰ | 4 |
3 | 日本語の基礎知識 | 4 |
4 | 要約筆記の基礎知識II 実習 | 10 |
5 | 話しことばの基礎知識 実習 | 10 |
6 | 社会福祉の基礎知識I | 4 |
7 | 聴覚障害者運動を手話 | 4 |
講 | テーマ | 時間 |
---|---|---|
8 | 社会福祉の基礎知識Ⅱ | 4 |
9 | 伝達の学習I II | 4 |
10 | 要約の学習I II | 4 |
11 | チームワークI II | 10 |
12 | ノートテイクI II | 12 |
13 | 対人援助I | 4 |
14 | 要約筆記者のあり方 | 2 |
この他に選択実習があります。
はじめは気楽に受講したが、学ぶうちにむずかしさが増した。日本語を使っているのに、いざとなるとことばの置き換えもできずに落ち込んだり。でも、仲間と最後まで励ましあい、支えあって学べた。
手話を学んでいるとき、手話でコミュニケーションの取れない方の存在を知り、文字や文が好きなので、自分に合っていると思い申し込んだ。しっかりした技術を身につけていきたい。
要約筆記の歴史を学ぶ中で、社会福祉従事者といわれて要約筆記の重要性を自覚できた。ただ書くだけでなく、社会福祉の知識も深めて、人に対する支援の力を高めていき、求められる要約筆記者になりたい。
要約筆記とは、主に人生の途中で聞こえなくなった方や聞こえにくい難聴の方のうち、手話でコミュニケーションの取りにくい方に対して文字で通訳する方法です。手書きとパソコンを使う方法があります。手話を使う方も要約筆記を使うこともありますが、やはり、圧倒的に中途失聴者や難聴者が利用しています。
東京都の募集要項では、18歳以上の都内在住、在勤を対象としています。パソコンコースでは自分のノートパソコンを持参できることも条件です(ウィンドウズでもマックでも可)。講習会は定員がありますから、受講試験を実施しています。試験に関しては当センターのホームページに過去問が載っています。
平成23年に厚生労働省から通知された「要約筆記者養成カリキュラム」にそって実施していますから、84時間です。5分の4以上の出席で東京都は修了証が出ます。欠席が上回っても最後まで受講することはできますが、修了後に登録試験を受けて合格者に登録していただくので、極力お休みなく出ていただくことが重要だと思います。
字が下手ということですが、書道のような達筆さを求めているものではありません。流れたり崩れたりする文字やくせ字は修正していただきますが、読みやすいことが第一です。講習会では文字を書くことからていねいに進めます。
たしかに、パソコン要約筆記の需要は増えています。しかし、東京に関しては手書きの需要は減っていません。個人のノートテイク(隣で書く方法)では、病院の受診、保護者会、グループワークなどでは手書きの汎用性が生きてよく使われています。情報受信が中心になる講演、講義、研修等はパソコン全体投影が急増しています
18歳以上ということで、上限は特にありません。ただ、新しいことを1年間学び、その後登録試験を受け、研修等で技術を磨きながら現場に出るとなると、そのハードな日常に対応できる健康と聴力は重要なポイントになると思います。
タッチタイピングができることは条件ともいえますが、速ければいいということだけでもありません。受講試験ではパソコンコース受講希望者には入力の試験もあります。そこでは入力の正確さと速度などを見ます。しかし、講習会のなかでも練習して入力技術が目覚ましく上達した方もいます。
音声認識をはじめとするITの開発は目覚ましいものがありますが、要約筆記は対人支援を含む福祉サービスの位置づけで養成しており、対象者の障害特性を知って行う支援です。利用者や周囲の状況を観察したうえで適切な支援をする技術は、人間が担うことになるでしょう。東京では、パソコンで会場全体に映し出す要約筆記の現場が多くありますし、28年4月からの差別解消法の施行により「合理的配慮」としてますます広がると思います。
一方で、難聴であるが故の悩みや困難を抱えた方に要約筆記を提供するためには、当事者の主体性を尊重してより良い利用につながるような対人援助技術が不可欠です。この講習会ではこうした学習も含んで実施しています。
経験がうまく生かせればいいと思いますが、要約筆記講習会はボランティアの育成ではありません。
また、大学でのノートテイクの方法は大学や支援者によりかなり違いがあるようです。要約筆記はきちんとした技術と知識を身につけ、登録試験に合格して行う福祉サービスですから、そのあたりの自覚は必要です。